お嬢様の苦悩。
「やっと見つけた」


春樹ではなく、先ほどダンスの誘いをかけてきた青いドミノマスクの男性だった。


「大広間にいなかったから。ここかと思って」


恵理夜は、春樹でなかったことに落胆を覚えた。


「そろそろ、終わりみたいだから中へ」

「あの……」

「さあ」


恵理夜は、促されるままにホールへ足を向けた。

しかし、相手の手を取ることができない。

取れば、いつ再出血を始めるかわからない切り傷が露見してしまうからだ。
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