高熱にベッド<短&番外>
唇が離れて、代わりに強く抱き締められる。
『ごめん』
「へ…?」
いきなりの永樹さんからの謝罪は、思い当たる節が無くて。
『だから、那子を追い詰めるつもりなんて無かったんだ。拒絶するつもりも無かったし、泣かせるつもりも無かった』
珍しく長く言葉を連ねる永樹さんは、いつになく真剣で。
私を抱き締める腕に力が入ってるのが分かる。
『ただ、那子無しの俺はどんなに狂っちゃうのかな、とか、手にできる状況を我慢するってどんな気持ちなのかな、とか………まぁ正直な所、那子から俺を求めるって言うのも淡い期待としてあったのは認めるけどね』
永樹さんの謝罪は、今回の禁欲についてで。
話を聞くうちに一さんの言っていた事が少しだけ分かった気がした。
つまり、禁欲は永樹さんの作戦で。
ただそれが行き過ぎちゃったって事。
「結局私は惑わされただけじゃないですか…!」
それを知ってしまうと、なんともやりきれない敗北感のようなものが込み上げてきて。
私は永樹さんの背中をパシパシと叩く。
『俺なんかいつも那子に惑わされてるってば。なんで分からないかな』
しかし、そう言って私を抱き上げて座らせた永樹さんとの距離に、今更ながら今日の自分の行動や言動を思い出して顔が赤くなったのを感じた。
『もっとして欲しいんだよね?』
「………っ」
『那子から上手にできたら言う通りにしてあげる』
そして甘く私を誘惑する永樹さんに、私は結局従ってしまうのだった。