ヒトノモノ
田中君は啓介と同じくらい女子社員に人気がある。
見た目がいいのは勿論、気取らない性格も、さり気ない優しさも彼のいいところだと思う。
「安達って、彼氏いるの??」
・・彼氏・・一瞬啓介の顔が浮かんだ・・けど、平静を装って言った。
「あのねぇ・・いたら男の人と二人でこうやって飲みに行ったりしないでしょ?」
「まぁ・・確かに。んじゃぁ、俺、安達狙っていいんだ??」
テーブルを挟んで向かいに座る田中君はあたしの顔を覗き込みながら言った。
あたしは、そのちょっと悪戯っこのような表情にドキっとした。
「・・はぁ?!?!なに言ってんの?!冗談はやめなさい!!もぉ!酔ってるの??」
「冗談じゃない・・って言ったら?」
「・・・・・・」
「・・あのさ・・ソレ・・なに??」
田中君はあたしの手元に視線を落とした。
「・・・あ・・ひる・・」
あたしはおしぼりで作ったアヒルを田中君の目線の高さに持っていった。
「・・こういうことされると、マジで惚れちゃうからね?」
田中君は顔を赤くしてそう言った。