ヒトノモノ
あたしが入社して間もない頃、新人研修で教育係を担当してくれていたのが木村さんだった。
「木村さんってカッコイイよね!!」
「うんうん♪彼女いるのかなぁ??」
「あんなイケメンに彼女がいないわけないじゃん??」
「だよね・・・ショック・・」
あたしはそんな会話を聞きながら、ふぅーーーっとため息をつく。
・・・女子高生じゃないんだから、もっと違う話で盛り上がりなよ・・・
その時、あたしは木村さんに全く興味がなく・・・
でも、新入社員の女の子全員が木村さんに夢中だった。
「あ・・安達さん!」
「・・・・・・」
資料整理を頼まれていたあたしは黙々と資料をファイルしている。
「安達さん??」
ハッと名前を呼ぶ声に気付き、「は、はいっっ!!」っと、とんでもない声をあげた。
「そんなに驚かなくても・・」
ソコにいたのは木村さんで、クスクスと笑いながらあたしを見た。
「す・・すいません・・・ちょっと集中していたので・・」
「ごめんね、邪魔しちゃったみたいで・・・ところで、今週末の歓迎会は行くよね?」
「あぁ・・はい。そのつもりです。」
「よかった。一度安達さんとはゆっくり話してみたかったから」
木村さんは優しい笑顔でそう言った。
・・・あぁ。きっと、コノ笑顔が女子を落とすんだね。