ヒトノモノ
「ふぅ~♪さっぱり♪」
啓介が暢気にバスルームから出てくる。
あたしは、平常心を装う・・・
・・・土日・・・啓介は何をしているのか・・・
・・・奥さんの事・・・とか聞いてみようかな・・・
「ねぇ・・啓介・・?」
「ん?」
「・・・家でシャワーとか入ってって・・大丈夫なの??」
「ん?なんで??」
「・・ほら・・ボディシャンプーの香りとか・・してたら・・」
「あぁ・・そんな事?大丈夫だよ。嫁、いつもこの時間には寝てるし、俺ら寝室別だし。」
寝室が別・・・そっか・・よかったぁ。
「そ・・そうなんだ・・ね・・奥さんってどんな人?いつ結婚したの??」
啓介はあたしの口から《奥さん》という言葉が出たことに驚いたようだった。
タオルで髪をバサバサっと拭いて話しだした。
「・・嫁は・・大学の時の同級生でさ。元々俺のツレの彼女で・・。ツレと色々あって、それを俺に相談しだしてからいつの間にか付き合いだした・・みたいな。結婚は、去年したばっか・・」
「そっか・・」
やっぱり・・聞くんじゃなかったかな。
めちゃくちゃ凹む・・・
啓介はあたしが黙り込んだのを見て、ギュッと抱きしめてくれた。
「そんな顔しないで。俺、優子にあんまり嫁の話したくないんだけど・・・」
「・・うん。でも・・・あたし・・・聞きたいの。知りたいの・・。」
「・・・なんで?」
「上手く言えないけど・・・奥さんが啓介を想うより、私の方が啓介が大好きだから・・・」
「・・アリガト、優子。俺もそういう優子が大好きだよ。」
啓介は優しくあたしの髪を撫でた。