ヒトノモノ
「・・・啓介は・・浮気してて平気なの?後ろめたくないの?」
「・・直球でくるねぇ。浮気してて平気な訳ないでしょ。後ろめたい気持ちもあるし。
でも・・何より、優子にかわいそうな想いさせてるのが一番辛いんだけどね。」
「あたしに?」
「だって、昼間に堂々と二人で歩けないでしょ?それに泊まりもできないし・・
優子の友達が経験するような事を俺は優子から奪ってる気がするから・・」
「あたしは・・・啓介の傍にいられたらいいの・・・」
「・・・優子・・・」
「ねぇ・・啓介。正直に答えてくれる?」
「なに?」
「・・奥さんの事・・愛してる?」
啓介はその質問に顔を強張らせた。
意地悪な事を言ってるのはわかってる。
でも・・・今だけは嘘でもいいからあたしを一番に好きでいて欲しいの。
「・・・正直なところ・・今はなんとも思ってないんだ」
あたしが望んだ答えを啓介は言ってくれた。
「そっか・・・」
心の中でガッツポーズするあたしがいる。
「実はさ・・・結婚したくて結婚した訳じゃないんだ。」
「・・え・・?どういうこと?」
「嫁が付き合っていた、俺のツレ・・病気で亡くなってるんだ・・・。それで、ツレが嫁を俺に託した・・って感じで。そりゃぁ、はじめは俺も嫁が好きだったよ。でも・・結婚が義務みたいな・・使命みたいな感じになってきて。」
「・・・・・・」
「向こうもきっとそんな感じなんだろうけどね。じゃなきゃ、結婚1年目から寝室が別なんてありえないでしょ?ちなみに土日も別行動・・・食事も別・・・子供なんて考えられないし。」
「それ・・・ホントなの??」
「嘘みたいなホントの話。」
「・・・ごめん・・啓介・・・」
あたし・・・そんな話聞いちゃったら・・・
嫌な女になってしまいそう・・・