ヒトノモノ



「何で優子が謝るの?謝るのは俺でしょ。俺と付き合ってなかったら、今、物凄くいい男と幸せになってるかもしれないし・・・」




啓介は自嘲気味に笑って言う。




「たら・・れば・・は、言って欲しくないよ。」





言ってはいけない言葉が・・・




喉のすぐそこまで出掛かっている・・・




《奥さんと別れて・・・》って言葉・・・




これだけは言ってはダメだ・・・




でも・・・それが本心。




じゃぁ・・・せめて・・・少しだけ我が儘言わせて・・・







「啓介・・・」





「何??」





あたしは啓介の腕をギュっと握って、啓介を真っ直ぐに見て言った。






「お願い・・・今日・・・帰らないで・・・」






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