ヒトノモノ
「優子・・・」
啓介は明らかに困った顔をしている。
あたし、最低だ。
はじめは、ただ啓介が時間のある時に傍にいてくれたらいいって思ってた。
なのに・・だんだんと欲が出てきて。
奥さんとうまくいっていないとわかった瞬間、啓介を独り占めしようって考えて・・・
人の家庭壊してまで自分が幸せになりたい??
啓介を困らせるだけなのに・・・
「・・プッ!!もぉ!!啓介ったら・・冗談を真に受けて・・・嘘だよ?そんなの。ちょっと啓介を困らせたくなっただけ♪」
あたしはわざと明るく振舞って言った。
ホントは・・・今にも泣き出しそうなのに・・・
「さて・・そろそろ帰る支度して??あたし、もう眠くなってきちゃったから・・・」
精一杯の笑顔を啓介に向ける。
「優子・・・そんな顔しないで・・・」
啓介はあたしをさっきよりも強く抱きしめた。
だから・・・こういうのが辛いんだってば・・・わかってよ・・・
「・・・優子・・・俺・・・」
あ・・・なんか・・・嫌な予感がする。
別れるって・・・言われそう・・・泣くな・・泣くな!!
あたしは身体を硬くして啓介の言葉を待った。
「俺・・・今日帰らないから・・・優子の傍にいるから・・・」
啓介のその言葉に・・・
あたしは身体中の力を一気に抜いた・・・