ヒトノモノ

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いつもより少し早くに目が覚める。




目が覚める・・というのは間違いで。




うとうとはしたけど、眠りについたという感覚は無い。




あたしが寝ている間に啓介がいなくなるんじゃないか・・という不安感。




でも隣から伝わる温度がそんな不安感を吹き飛ばす。




首元にはあたしがつけた赤い印。




それがくっきり付いていることに安心した。








あたしはスルっとベッドを降りてキッチンに向かう。




簡単な朝食をつくり、テレビをつける。




土曜日特有のローカルな情報番組を意識無く見る。




すると啓介が眠そうに目をこすりながらリビングに入ってきた。




「おはよう♪」




「おはよ・・」




啓介はまだ眠いのかそのままソファーにドカっと横になる。




「ご飯食べる??」




「んあぁ・・とりあえずコーヒー頂戴・・」




「ん。わかった。」






あたしはコーヒーをいれたカップを持ってソファーの前のローテーブルに置く。



あたしの手からカップが離れたのと同時に、力強く腕を引かれ、あたしの視界はグルっと反転した。




「なんで一人で起きちゃう??」




「啓介が、気持ち良さそうに寝てたから・・・」




「なぁ、知ってる?」




「な・・なにを?」




「朝一のセックスってめちゃくちゃ気持ちいいって・・・」




「へ?!?!」




「いただきまっす♪」








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啓介と一緒に暮らしたら、きっとこんな幸せが続くんだ・・・




いつか・・・




これが当たり前になりますように・・・






この初めての朝を迎えた事が・・・




あたしたちの関係をぐっと進める事となった。





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