ヒトノモノ
田中君はやっぱりいい男だ。
同じく順番待ちしている人たちが田中君に見入っている。
あたしも、一生懸命話をしている田中君をジッと見つめる。
・・・啓介とこんな風に堂々とデートできたら・・・
なんてついつい考えてしまう。
「・・なに?なんか顔についてる??」
「・・え?!あ・・ごめんごめん。田中君に見とれちゃって♪」
あたしは軽く冗談でかわす。
「・・・そういうの本気にしちゃうから・・・」
田中君はプイっと横を向いた。
「こらぁ、照れるな照れるな♪」
あたしはまた冗談っぽく田中君の胸をバシバシ叩いた。
やっぱり・・・こういうのがデートだよね・・・
陽の当たる場所で、人の目を気にしないで・・・
だんだん淋しくなってくる・・・
啓介・・・あたし、啓介とこういうふうに過ごしたい・・・
そんなことを思っていると田中君が驚いたような声をあげた。
「あれ??アレ、木村さんじゃない??」
あたしは、田中君のその言葉に過剰反応した。
そして、田中君の視線の先をゆっくり目で追った。