ヒトノモノ
--------------------
ピンポーーーン
暫くしてインターフォンが鳴った。
念のためカメラで確認する。
やっぱり、映っているのは真っ黒な画面。
クスっと笑いが漏れる。
鍵を開けて、ドアを開けるとそこには待ち焦がれていた人の姿があった。
「コラ・・またすぐドアを開ける・・・」
「だって、カメラにあんなことするなんて啓介だけだもん」
リビングに入り、コーヒーを出す。
ふと、啓介の手にある荷物に目がいく。
「なぁに?それは??」
「・・あ?これ?俺の着替えとか・・」
「もう持ってきたの?金曜日って言ってたのに?」
「・・あぁ・・実は・・俺、家を出てきたんだ」
あたしは、自分のコーヒーカップを危うく落としそうになった。
「え・・出てきたって??どういうこと??」
「さっき嫁に・・・俺の気持ちを正直に話して来た」
「俺の気持ちって??・・で、奥さんはなんて?」
「好きな人がいるってこと。そしたら、好きにしてくださいってさ」
啓介は苦笑した。
「・・そう・・なんだ・・。でも急になんで奥さんに話そうと思ったの??」
「それは・・・昼間・・・優子と田中が一緒にいたのを見たから・・・二人があまりにも似合ってて・・何て言うか・・ごく普通のカップルに見えてしまって。だから、勢いじゃないんだけど、優子をすぐにでも俺のものにしたくなって・・・」
「・・・そんな、短絡的に・・・」
「短絡的なんかじゃないよ。最近ずっと考えてたから・・俺には優子が必要だから・・正直・・今の嫁と子供作って、家庭を築くとか・・考えられない。」
「・・じゃぁ・・あたしとは家庭を築けるの??奥さんと結婚してる限り無理じゃない・・」
また、さっきの田中君の言葉が頭をよぎる・・・