ヒトノモノ


「おいで・・優子・・・」




啓介はあたしの手を掴んで引き寄せた。




抱きしめられると、もう啓介しか見れなくなる。




奥さんと別れて、あたしと結婚して・・・




そんな言葉が口から出そうになる。




「嫁の事、優子との事は俺が解決するから・・・だから・・・優子は俺だけ見てて・・・」




「ずるいよ・・そんなの・・・あたし・・今日田中君に告白されたの。」




「え・・マジで?」




「結婚前提に付き合って欲しいって・・・」




「なんて答えたの?」




「何にも言ってない・・・」




「そっか・・・ちゃんと断れるように・・・俺頑張るから・・・」






ズルイのはあたしだ・・・




田中君の事を出して、啓介を焦らせようとしてる。




酷い女・・・




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