ヒトノモノ
その日から啓介はあたしの家に住むようになった。
あたしたちはお互いに求め合い、毎日愛し合った。
夜中に目が覚めれば隣で寝息をたてている啓介の姿。
朝目覚めれば愛しい啓介の姿。
好きな人のために夕飯を作り、帰りを待つ。
好きな人の衣類を洗濯し、畳む。
好きな人のワイシャツをアイロン掛けする。
日常の所帯染みた事があたしには幸せだった。
今まで出来なかった旅行もした。
写真も撮った。
些細なことでたくさん喧嘩もした。
どれをとっても・・・・あたしには幸せだった。
でも・・・
幸せは長くは続かない・・・
《奥さん》という存在。
紙切れ一枚の婚姻でも、あたしみたいな《愛人》とは違って・・・
やっぱり《奥さん》が優位だった・・・