ヒトノモノ
次の日。
仕事が終わると、啓介は自宅に向かった。
奥さんにお金を貰いに行く為。
奥さんに会うことにはいい気はしないけど、現実問題、お金が無くては困る。
「何かあったら、すぐに連絡してね・・・ちゃんと帰ってきてね?」
不安そうなあたしの顔を見て、啓介はあたしの頭をポンポンとして言った。
「そんな不安そうな顔をするな。大丈夫。話して金貰ったらすぐに優子の元に帰るから。」
-------------------
・・もう23時をまわった・・
あたしは、リビングのソファーに膝を抱えて座る。
まだ・・話し合いしてるのかな。
携帯を開いては閉じ、開いては閉じ・・・、メールをセンターに問い合わせたり・・の繰り返しで電池残量が恐ろしく早く減る。
・・・夜中の1時を回る・・・
あたしは充電器を携帯に繋げて、思い切って啓介に電話を入れた。
「お掛けになった電話番号は電波の届かない場所におられるか、電源が入っていないためかかりません・・・」
嫌な予感がする・・・
その日、啓介が帰ってくることはなかった。