ヒトノモノ



木村さんに連れてこられたのは、隠れ家的なバーだった。



こういうお店を知ってるって、さすが社会人って感じ。



カウンターテーブルに隣同士に座る。



木村さんは何を呑んでよいかわからないあたしの為に適当なカクテルを頼んでくれた。





「お疲れ様♪」と、軽く乾杯をする。




「・・木村さん、モテモテでしたね」




「あぁ・・あぁいうの凄い嫌なんだよね。ギャァギャァうるさいでしょ?女子高生かっ!!て思っちゃうよ」



木村さんは口を尖らせて言った。



あたしはその姿がおかしくてクスっと笑ってしまう。




「そういう安達さんだって、上司や同期に囲まれてたじゃん?」




「はぁ・・愛想笑いしすぎてホッペの筋肉が引きつりそうでしたよ」




「まぁ、安達さん、新入社員のなかで一番可愛いって言われてるから、みんな話しかけたくて仕方なかったんだろうなぁ・・」




「・・ハハハ。それは無いです・・」




「そんなことないよ?だって、俺も・・・」




木村さんはそう言うと、左にいるあたしをチラっと見た。




「ま・・まぁ・・あれだ・・とりあえず・・もう一回乾杯しとくか!!」




そういってまたお互いのグラスを寄り添わせる。




カチンと音を鳴らさない乾杯をするのが、やっぱり社会人だ。






それから、あたしと木村さんは他愛も無い話で盛り上がった。


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