ヒトノモノ
あたしは、背筋がゾクっとした。
この人は・・・厄介だ。
「あの・・・」
と言いかけて、また奥さんは話を続けた。
「ねぇ・・コレ・・・」
コレと言って見せてきたのは、バッグ。
「コレ、家の主人の稼いだお金で買ったのよ?コレも・・コレも・・」
次々と装飾品を見せてくる。
「・・・こういうの・・・妻の特権なの」
不適に笑う姿に嫌悪感を感じた。
「のぞみっ!!いい加減にしろ!!」
啓介が奥さんをあたしから離す。
奥さんは、「まだ言いたりないのに・・・」と一言残してあたしから離れた。
あたしは、その後姿を見つめるしか出来なかった。
「・・安達?」
田中君のあたしの名前を呼ぶ声で、ハッと我に返る。
「あ・・ごめん。今日は・・パスする」
あたしはそう言って、また仕事を始めた。
「わかった!また誘うよ・・・」
田中君は何かに気付いたように言った。