ヒトノモノ
確信した。
奥さんは啓介を愛してはいない。
自分の元から離れていくのが嫌なだけ・・・
しかも・・・その原因は《女》・・・それが余計に奥さんを啓介に固執させている。
あの様子じゃぁ、別れる気なし・・・
あたしはますます自分の将来が不安になった。
もちろん。
啓介の今のまま進む将来も気の毒に思えた。
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仕事を終え、家に帰る。
全く食欲もわかないから、野菜ジュースを一杯飲んで食事の代わりにした。
・・今日は寝不足だし・・とても疲れた・・。
このままベッドに沈みたい・・・
「ただいま・・・」
あたしはその声でとびそうな意識を取り戻す。
「おかえりなさい・・・」
「あぁ・・。優子、今日はごめんな・・」
「ううん・・いいの。あたしは大丈夫だから。」
「アイツ・・まさかあそこまでするとは思わなくて・・・」
「そうだね・・相当キテルみたいだね。それに・・不倫相手があたしってばれてたみたいだし。」
「あぁ。そうだな・・。他の社員にはバレてないと思うけど・・」
「・・田中くんには気付かれたかもね・・」
「なぁ・・優子。俺、今の会社辞めて他に就職しようと思う。」
啓介は趣味の悪いネクタイを外して、ソレを丸めてゴミ箱に放り投げた。