ヒトノモノ
崩れる関係


奥さんは相変わらず啓介にお金を渡していない。




あたしは、啓介が奥さんの元に戻るのが嫌で出来る限りの事を啓介にした。




家賃や生活費、啓介の交際費、携帯代・・を全てあたしが支払っていた。




まわりからみれば、《ヒモ》状態。




でも、啓介だって色々あたしに迷惑をかけないように・・と努力してくれてる。




とても大事にしていたゴルフ道具一式を売ったり、いくつか持っていた高級腕時計も売ったり。




・・でも・・・ソレもいつまでも続くわけなく・・・




「啓介・・ごめん。あのさ、前に言ってた転職の話って・・・」




「あ・あぁ・・。ソレがなかなか進まなくて・・」




「・・そっか。早く進むといいね!」




「うん・・。ホント」・・ごめんな。迷惑ばかりかけて・・・」




啓介はそう言うと、タバコに火をつけてベランダに向かった。




啓介はタバコは大学時代に止めていた。




ところが、最近になってまた吸うようになった。




啓介曰く・・・「ストレスが溜まる・・」と。




ストレスが溜まっているのは啓介だけじゃないのに・・・




あたしだって・・自分の欲しいものも買えずに我慢してるのに・・






啓介には愛情はある。




未だに抱かれていても、気がおかしくなるくらいに快感に溺れてたまらなくなる。




啓介があたしの横にいるだけで、とても幸せだと感じるし・・・




でも・・・あたしの心のどこかで啓介に対して不信感が芽生えてきたのも事実だった。








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