ヒトノモノ


昼休み。



あたしは京子と屋上でお弁当を食べている。




・・・京子に・・話してみようかな・・・。




「ねぇ、京子・・・」




「ん??」




京子はアイスコーヒーが入ったカップを口につけながら軽く返事をした。




「あのね・・・あたし・・・」







「木村さんの子供でも出来たとか?」









あたしはその言葉にハッとして京子を見る。




「・・木村さんとのこと・・知ってたの・・?」




カップのコーヒーをグイっと飲み干して、京子は言った。





「不倫経験者が見たら、誰でも気付くと思うよ??」




「・・そうなんだ。」 ・・・やっぱり京子も不倫した事あったんだ・・・




「・・で?奥さんの問題?それともやっぱり妊娠?」




「妊娠はしてないよ。奥さんの問題っていうか・・お金の問題っていうか・・」





あたしは、京子に啓介との現状を話した。




「なるほどね・・木村さん・・・煮え切らない男だね。優子・・はっきり言うけど・・」




「・・うん・・?」




「木村さん、優子と別れて家に戻ると思うよ。」




「・・・・・・」




「転職の話・・・有り得ないから。だって、木村さん、今度の9月で栄転するんだってさ!」




「え・・栄転??聞いてない・・・そんなの」




「まぁ、知ってるのはごく一部なんだけどね。出世するのがわかってて、転職する奴なんていないでしょ??それに不貞行為は出世の妨げになるしね・・・」




「そ・・んな・・・。」




「優子。あたし言ったよね?不倫は気持ちが入った時点で終わりにしなきゃいけない。お互いがダメになるから・・・って。」





・・・あぁ・・そうだ。




あたしは今頃になって、その言葉の意味がわかった気がした。





< 63 / 72 >

この作品をシェア

pagetop