ヒトノモノ
昼休み。
あたしは京子と屋上でお弁当を食べている。
・・・京子に・・話してみようかな・・・。
「ねぇ、京子・・・」
「ん??」
京子はアイスコーヒーが入ったカップを口につけながら軽く返事をした。
「あのね・・・あたし・・・」
「木村さんの子供でも出来たとか?」
あたしはその言葉にハッとして京子を見る。
「・・木村さんとのこと・・知ってたの・・?」
カップのコーヒーをグイっと飲み干して、京子は言った。
「不倫経験者が見たら、誰でも気付くと思うよ??」
「・・そうなんだ。」 ・・・やっぱり京子も不倫した事あったんだ・・・
「・・で?奥さんの問題?それともやっぱり妊娠?」
「妊娠はしてないよ。奥さんの問題っていうか・・お金の問題っていうか・・」
あたしは、京子に啓介との現状を話した。
「なるほどね・・木村さん・・・煮え切らない男だね。優子・・はっきり言うけど・・」
「・・うん・・?」
「木村さん、優子と別れて家に戻ると思うよ。」
「・・・・・・」
「転職の話・・・有り得ないから。だって、木村さん、今度の9月で栄転するんだってさ!」
「え・・栄転??聞いてない・・・そんなの」
「まぁ、知ってるのはごく一部なんだけどね。出世するのがわかってて、転職する奴なんていないでしょ??それに不貞行為は出世の妨げになるしね・・・」
「そ・・んな・・・。」
「優子。あたし言ったよね?不倫は気持ちが入った時点で終わりにしなきゃいけない。お互いがダメになるから・・・って。」
・・・あぁ・・そうだ。
あたしは今頃になって、その言葉の意味がわかった気がした。