プラネタリウム
第二章

保健医

「ちょっと金足りねーんだ。貸してよ」


渉が、他校の生徒に手を出した。



あの学園祭の後、渉は荒れに荒れた。


喧嘩の回数も増えたし、カツアゲも増えた。
あまり飲まない酒にも手を出している。


それを秀二は黙って見てる他なかった。



「……金貸せっていってんだろ」



ガシャン、とそばにあったごみ箱を蹴り飛ばす。


他校の生徒は震え上がっている。



もうすぐ殴るな。



秀二は直感した。



「八嶋渉」



ふいに後ろから声がして、渉は振り向く。



背の高い男性だ。


くせっ毛の茶髪に髪と同色の瞳。
派手な赤いロングコート以外見れば、顔も整った顔立ちで背も高い、容姿は完璧だ。


男がそばに寄ってくる。



渉は一瞬身構えた。


「カツアゲ中悪いんだけど。ちょっと話があってな」


そう言って腕を掴まれて無理矢理連れていかれる。


「離せよっ」


振りほどこうとしたが、びくともしない。



殴りかかると、片手で止められた。



「暴れんな。……真央のことだ」



ぴたりと渉の動きが止まる。





真央?





何故真央の名前を知っている?



この男はなんだ?





目線を送ると、黙ってついてこいと目で促された。



渉は黙ってついていくことにした。





秀二はその光景を、影から見守っていた。
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