プラネタリウム
そう呟いた彼方は真っすぐ渉を見据えて言った。
「神楽坂紫苑って知ってるか?」
神楽坂紫苑。
知ってるもなにも、同級生だった。
神楽坂紫苑は星南高校では有名な不良だ。何でも教師を殴ったとかで一年留年したから渉より1つ年上らしい。
見かけたことはあるが、会って話したことはなかった。
「そいつがなに?」
渉が聞くと、彼方は一瞬悲しそうな顔をした。
躊躇いがちに口を開く。
「神楽坂紫苑は真央の兄なんだ」
神楽坂紫苑は真央の兄―――。
「あいつ家でも荒れててさ。真央とかにも暴力奮ってたみたいなんだよ」
真央に暴力―――。
「それにあいつの下の奴らが真央を襲おうとしたりしたから、星南高の奴を怖がってんだな」
バン。
渉は喫茶店を飛び出していた。