プラネタリウム

嵌まる罠


真央が紹介してくれた喫茶店は、渉にはとても似つかわしくない場所だった。


隠れ家ふうの、古びてはいるが小綺麗な、シックな内装。


履き古したジャケットとジーパンで来る場所ではないことくらい、渉はわかっていた。


「何キョロキョロしてるの?」


渉の心境などまるでわかっていない真央が、向かえに座っている。


渉も腰を下ろしながら真央に耳打ちした。


「こんなとこ、来たことねーし」


「ないの?じゃあ普段はどんなとこ行くの?」


「そりゃ、ファミレスとか…」


何だか言ってて恥ずかしくなってくる。



こういうとき、嫌でも真央がお嬢様だということを思い知らされる。


それでも、まあいいのだが。


「何か話して」


運ばれてきた紅茶を飲みながら、真央が話しかけてくる。


「何かって?」


「何でもいいの。貴方のこと、もっと知りたい」


思わず、見とれてしまった。



真っすぐな真央の言葉が、恥ずかしくも、嬉しかった。


「よくそういうこと言えるよな」


恥ずかしくて、珈琲に口をつける。


真央は首を傾げた。


「え、おかしい?」


「おかしくはないけど、真っすぐすぎるよ」


苦笑しながら真央を見る。


納得いってないようで、頬を膨らませてむくれる真央が可愛かった。
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