プラネタリウム
帰路につく途中、大きな橋を渡る。
黒いその橋から見える景色をぼんやりと眺めながら、渉は歩いていた。
ふと、何かが目に留まった。
少女、だろうか。
清楚な制服を着込んで、カーキ色のカーディガンを羽織っている。
あの制服は青蘭女子校の制服だ。
青蘭女子といったら、お嬢様の通う有名な高校。
視界の隅に入っただけで、自分とは縁遠いな、と思いながら通り過ぎようとしたその時――。
「あっ」
小さく声が上がったかと思うと、その少女が、橋の縁に身を乗り出していた。
「危なっ」
反射的に体が動いた。
半分ほど乗り出した体を、掴んで引き止める。
少女がじたばた暴れた。
「離してください!」
落ちる気か。
こっちも半ば意地になって離さない。
「離すか、馬鹿!やめろって」
「でもっ、髪飾りが…」
「死ぬなよっ、髪飾りなんてどうでも……って、え?」
ふたりの動きが、ぴたりと止まる。
少女が、振り向いた。
清楚な印象に相応しく、童顔で可愛らしい顔。肌は透き通るように白くて、どこかはかなげに感じた。
二重で大きな、黒い澄んだ瞳が、真っすぐに渉を見つめていた。