プラネタリウム
「死ぬなって、え?え?」
「髪飾り?なんのこと…」
少女の目が大きく瞬いた。
頭の上には疑問譜が浮かんでいそうだ。
冷静になって考え直してみる。
髪飾りって、何だ?
「ねえ、髪飾りって?」
渉が聞くと、少女は自分の髪を指差した。
漆黒の艶やかな細い髪。
背中まで伸びたその髪が、風に揺れる。
「髪飾り。ここにつけてたの、川に落ちちゃって…」
そう言って少女は俯いた。
「髪飾り、ね。落ちたのか」
縁に寄り掛かって川を覗いてみる。
さほど深くはないが、広い下流だ。日の光りが川に反射してきらきら煌めいている。
渉は心の中で頭を抱えた。
「……そんなに大切なものなの?」
今にも泣きそうな顔を見て、ちょっぴりいたたまれなくなってそう聞いてみる。
静かに、俯いていた顔を上げた。
「大切な人からの贈り物なの。あれがないと、ダメ」
泣きそうではいるが、はっきりとした意志を聞いて、渉は走り出していた。
このまま見過ごすのは、嫌だったから。