プラネタリウム
チケット
「ねえ、お礼がしたいの」
河原を歩きながら、真央がそんなことを言った。
「お礼?」
「そう、髪飾りのお礼」
笑って言う彼女は、どこか楽しげだ。
つられて渉も笑顔になる。
「え」
短く渉が声を上げた。
今、笑った?
この俺が?
笑ったことなんて今まで一度だってなかったのに。
真央が不思議そうに渉を見つめている。
こいつが、
真央を見てると、ふいにペースが崩される。
今まで作り上げてきた仮面が、思いきり剥がされる感じ。
会って間もないけれど、渉はそう、直感した。
すぐに渉の顔から笑みが消える。
「どうしたの?」
真央が下から見上げるのを見て、渉は考える。
そうだ、からかってやろう。
「それよりさ、お礼してくれるんだろ?」
「あ、うん。わたしに出来ることなら何でも」
渉はしめたという顔で笑った。
「じゃあ、俺とデートしてよ」