プラネタリウム
学園祭
吹奏楽のトランペットの音を合図に、学園祭が始まった。
真央は喫茶店の準備で忙しく動き回っている。
「ねえ、明日でしょ?その髪飾り拾ってくれた男の子がくるのって」
隣でさつきが、お盆にコップを乗せたまま、話しかけてくる。
「うん、そうだよ?」
「でもお礼にデートしたいなんて、なんか飢えてる狼みたい」
さつきは美人だ。
柔らかい栗色の巻き毛を靡かせながら、真央と一緒のメイド服をさりげなく着こなしている。
背も高くて足も長い。まるでやまとなでしこだと、真央はいつも思っていた。
さつきからすれば、男なんて小さいものなんだろう。
モテてるためか、さつきは若干人を見下す傾向にある。
「なんでOKしたのよ」
回り込まれて、じっと睨まれる。
今回のこと、あまりよくは思ってくれていないようだ。
「だって、髪飾り、助けてくれたんだよ?ずぶ濡れになってまで…」
「でも何考えてるかわかったもんじゃないじゃない」
「やめてよ、そういう言い方。渉くんはそんな悪い人じゃないって」
確かにさつきの言う通り、彼が何を考えてるのかは分からない。
デートしようって言われたとき、少し驚いたし…。
それでも彼は、必死になって髪飾りを探してくれた。
日が暮れるまで、探し続けてくれた。
悪い人ではないと思う。
「ま、気をつけることね」
そう言い捨てて、客に呼ばれたさつきは行ってしまった。
一人立ち残される真央。
「渉くんは、いい人だよ…」
消え入りそうな声で、真央は呟いた。