heart to heart ふたりのキセキ
少しずつ
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最近になってようやく、
自分に何が起こって
今どんな状況なのか
わかってきた気がする。

私、『あの世』に
行っちゃいそうになってた。

目が覚めたらICUで、
点滴が何本もつながってて、
のどは枯れてるし、
体は痛くて動けない。

それでも、
律は心配そうにしながら
私の手を握り続けてくれてた。

その律が
1週間ほどいなくなるらしい。


「…どうして?」

「ん、学会で。
 アメリカであるから」

「アメリカ…」

「そう、アメリカ」


ぼんやりしてる私に、
子供に言い聞かせるみたいに
ゆっくり話してくれる。

アメリカかぁ。

1週間かぁ…。


「さみしい…」


思わず本音が出る。

滅多に言わないのに。

今の私、かなり弱気。


「あのさ…柚希」


律が神妙な面持ちで言う。


「さみしいけど、
 また帰ってくるから。
 1週間だけ我慢して?」


そりゃそうだよね。

学会だもん。

仕方ないよね。


「それにさ、
 もしかしたらそこで
 柚希の病気の治療法が
 見つかるかもしれない」

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