ユメみる夢みる僕のキセキ
「優実はね……ずっと、雫ちゃんと一緒だからねっ!」

 優美。小さな頃から隣に住んでて……
 いつもお節介で、でも……
 最後の最後まで俺の側で優しくしてくれた、幼なじみの名前だ。
 なのに……俺は……

 ――止めろ、言うな!!

 俺は幼い自分が、次に口にする言葉を知っている。いや、思い出した。
 そう、俺はあの時……
 全てを忘れたいと願って……
 一人になりたいと願って……
 これ以上、何も失いたくなかくて……
 もう、自分が辛い思いをしたくなくて……

「――君……誰?」

 全て壊したんだ。
 俺は記憶から、優実の事を消し去ったんだった。
 ――最低なクズだな……俺は。

『そうね……。でも……、今は気付いたんでしょ?』

 ――今更な……。全て、思い出したよ。
 そうだ、俺はこの日からの人生、色々な事を忘れていった。
 楽しかった思い出も、場所も、住んでいた家すら。
 そして、しまいには……両親の顔まで、忘れた。
 全部、自分が楽になる為に……

『なら大丈夫。……優実は今でもあなたを待っているわ!』

 ――え……優実が……?

『そう、あの子は約束を守ってるわ』

 ――約束。それは……

「雫ちゃん……わたし…待ってるから。どんなに雫ちゃんが優実を忘れたって…雫ちゃんが辛くなったら、何時だって側に居てあげるからっ! だから……いつか…もう一度…わたしの名前を呼んでっ!」

 何もかもを忘れた小さな俺に言った、小さな優美の泣き顔。
 ――だから、側に……いてくれたのか。

『そう、だからさっさと戻りなさい。そして……あの子に言ってあげなさい。名前を呼んで、おかえりって! ……わかったわね、ヘタレ!!』

 頭に響いた、その言葉を最後に……
 体に温かい感覚が体を包み込んで……また、真っ白な世界が訪れた。
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