ユメみる夢みる僕のキセキ
「ふー、色々と思い出したんでな」

「……そう、よかったわね。もう……優実の手を離しちゃダメよ。この子は、雫が気付いてくれるのをずっと待ってたんだから」

 そうか、やっぱり……文歌は全部知ってたんだな。
 それで、なら、何時までも思い出さない俺に、腹も立つよな。

「よかったわね優実。今まで……よく頑張ったわね……」

「……うんっ」

 俺を抱きしめて泣いている優実の頭を撫でた文歌は、ほほ笑みながらそう言った。
 その言葉に優実も嬉しそうな顔を返す。
 この二人は……この世界の事を知っているのか?

「……文歌、此処は夢なのか?」

 きっと、この質問は優実と文歌にとっては予想外な事だったんだろうな。
 二人は驚いた顔で俺を見て、一瞬、時間が止まったかのように黙り込んだ。

「……そうよ」

「文歌ちゃん!?」

 でも、すぐに文歌は溜息を吐いて、どこか嬉しそうに俺に答えをくれた。

「そうか」

「し、雫……あのね…その……」

 その事に優実は焦ったように、俺に言葉を投げかけようとするが……
 どうも言葉が出てこないようだ。
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