ユメみる夢みる僕のキセキ
4時限目の終わりのチャイムが鳴り、未だに不機嫌そうにしている平手女とその間で何か言っている優実を無視し、俺じゃ無い「雫」の両親から渡されたお小遣い三千円を持ち、昼飯を買いに購買に行こうと席を立ちあがった。
「よーし、全員居るかー?」
だが、なぜか担任の教師が、クラスの生徒たちを見回しながら入って来て俺はその場に立ち止まった。
何だ、何かあるのか? 昼休みに担任がクラスに来るという事自体は別に変ではないが、やけに周りが騒がしい。
「じゃあ言う事無いのでHRも無しで。明日から、冬休みだが問題は起こすなよ!」
冬休み? そう言えば、もうそんな時期だったのか…。まあ、一人でいるのに日にちも曜日も関係なかったからな。
休みでも学校があっても、一人には変わりない。
「ねえ、雫?」
「あ?」
机に戻り教科書を鞄に入れていた俺に優実が横から話しかけてきた。
「あのさ、お昼ご飯どうする?」
「どっかで買う」
「あの……よかったら食べていかない? ね、文歌も一緒に!」
その瞬間、俺と平手女の目が一瞬合った……
「絶対にお断りだ!」
「あ、あたしもよ、こんなヘタレと一緒なんて!」
「ヘタレ……俺が……ヘタレ?」
俺は剣道の全国チャンプだぞ。
昨日の学校の連中の態度と言い、どうやら俺では無い「雫」は……ヘタレのようだ。
「そんなこと言わないでね、一緒に行こうよっ!」
「帰る」
やってられるか、こんな事。鞄を手に持ち、俺はそのまま教室を出たかった。が……
「……放せ」
あと一歩で教室から出れるという所で、優実に後ろから抱きつかれ、引き離そうとするもガッチリと掴んだ両腕は離れることはなく。力ずくで退かすことも考えたが……
「行けばいいんだろ、行けば!」
何故か昨日必死に俺を探してボロボロになっている優実の姿を思い出すと、自分でもよくわからずに折れてしまった。
あの平手女も、俺と同様に「うん」と言うまでしつこく優実に迫られて、結局は優実の望みどおり三人で昼飯を食べに行くことになってしまった。