ユメみる夢みる僕のキセキ
 クソ、まったく訳が解らない!
 見覚えのない家に訳の解らない女、おまけに今度は知らない人の声。
 とにかく、確かめるんだ。
 何故こんな場所に居るのか解らないが、此処は全く知らない場所に間違いない。
 この声の主達だってどんな奴かも解らない……
 気付かれぬように様子を伺おうと、気配を消して階段を下り、声のする方にゆっくり俺は近づいた。
 声は階段を下った突き当り右手から聞こえてくる。
 台所に大きなテーブル、ニュースが流れてるテレビ……この部屋は居間だ。
 俺はばれない様に、居間に入る扉の影から中の様子を覗いた……
 筈だったのだが……

「ん、雫起きたのか?」

「えっ!?」

「あらあら、どうしたの、そんな所に隠れて?」

 突然、全て分かっているかのように笑い、声の主は俺に話しかけて来たのだ。

「……チッ」

 ばれてしまったのに隠れていても仕方なく。扉から居間に入り、声の主達の顔を正面から見た。
 話しかけてきた声の主は二人。エプロン姿の女性ともう一人は浴衣のようなものを着ている男性。その顔は初めて会う人の筈なのに……前に逢った事のあるような、そんな不思議な感覚が頭を埋(う)める。

「ほら、雫。朝ごはん冷めないうちに食べて。あなたもよ」

「わかってるよ、母さん」

 母さん。そう言うってことは誰かの親か?
 話の流れからこの二人は夫婦である事は何となく解った。が……

「あれ、雫? 朝ごはん食べないの?」
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