ユメみる夢みる僕のキセキ
 小さな頃から一緒?
 それは、俺が一人きりになる前……まだ、普通に笑えて、怒って、泣いていた頃だ。

 「でもまあ、優実ちゃんが雫に優しいのは幼なじみだからってだけじゃないかもね、ふふふ」

 駄目だ、やはり優実なんて人間、俺は知らない……
 何か、楽しそうに笑う母さんは、俺の手当てを澄ませると、そのまま立ち上がった。

 「じゃあ、母さん、ご飯つくるわね。雫はもう少し、休んでなさい」

 母さんは微笑みながら、そう言うとゆっくりと台所の方へと歩きだした。

 「……雫、優実ちゃんは、雫の事を一番、誰よりも大事に思ってるわ」

 「え……?」

 「だから、忘れるなんて悲しい事……しちゃ駄目よ」

 ただ、台所に向かいながら言った母さんの一言だけはどこか悲しそうだった。
 母さんは何を言っているのか?
 母さんは優実の事を知っている。でも、やっぱり俺には解らない。
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