ユメみる夢みる僕のキセキ
「あらあら、どうしちゃったの雫? 楽しくない?」

「いや、別に……」

 楽しくない訳じゃない。母さん、優実、文歌と一緒なら、これから行く旅行とやらも、楽しいに決まっている。
 ただ、何年もの時間一人でいて、こういう時にどのようにすればいいのか解からない。
 でも楽しい。そんな事を思う自分が不思議で、出会ってまだ僅かな優実や文歌……
 違う、文歌に関しては俺はまだよく解からない。なんとなく、良い奴だってのは解かるけど、深いところまで、解かる訳じゃない。
 優実。俺はどうして、彼女の事が解かるのだろう?
 優実はお節介で強引で……それでいて優しくて、いつもそばに居てくれる、そんな人間だ。出会って間もない、知らない幼馴染なのに、彼女に関して、俺は知っていた。

「えへへ、昔はあの場所に行くと、わ~い、わ~いって大騒ぎしてたのにね、雫」

 後ろの席から身を乗り出して言う優実。

「なあ、さっきも言ってたけど、久々って……俺はこれから行く場所に、行った事があるのか?」

「え、忘れたの? 山の別荘よ、昔よく連れて行ってあげたじゃない、優実ちゃんと一緒に、三人で!!」

 「山の……別荘……?」

そう言われ考えてみると、曖昧にだけど思い出した。
小学校に入って間もない頃、冬休みに行った山の別荘。生い茂った木々に囲まれ、近くには草原があってゆきだるまとか作って、夜には母さんが用意していたバーベキューなんかしたんだっけ……?
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