promise ~夏の約束~
俺はおばあちゃんから渡されたお花を供えると一礼して丘を降りた。
人様のお墓に長居するものではない。
ましてや俺なんかが来ては行けない場所。
雪姫の大切な…、大切な場所。
「―――…ただいま帰りました。」
玄関の扉を開けるとおばあちゃんの優しい声が聞こえる。
「ようかん、切ってあるわよ。」
俺は「頂きます。」と言って居間の縁側に向かった。
夏なのに扇風機ひとつで過ごせるくらいに風が気持ちいい。
「…雪姫ちゃんはいなかったんだね。」
俺が羊羹を口に運ぶと新聞を広げていたおじいちゃんが呟くように言った。
「…はい。」
俺は小さく返事をすると甘いようかんを再び口に運んだ。