月夜の散歩
職員室に戻り、市島先生の元へ…プリントを指差しながら
「まず…卒業式のここの校歌の順番なんですが……」
「はい」
隣に立ち、一緒にプリントを覗き込む。
この時期は入試や卒業式、入学式に新学期…と続くため職員室もいつもよりバタバタしている。
そのせいなのか、部外者の彼が入室したのを誰も気づかなかった。
視線感じて顔をあげたら、真向かいの椅子に座り彼がじっと観ていた。
「……!!…エッ…あの……先生?」
「…ん?」
市島先生が私の指差す方向をみた。
「あぁ…あいつはほっといて大丈夫です。」
「…エッ…でも…」
「仕事の参考にしたいから…て見学に来てるんですよ」
「…??…仕事??」
〈…仕事?…参考?…〉
私の頭に?マークがいっぱい出て来た。
すると市島先生が…
「あれっ??…藤緒先生、気付いてない??」
「…何がです?」
話が全くみえない。
「あいつ、芸能人なんですよ。」
「…?…芸能人?」
あいつと言われた彼をみる。
「観たことない?」
隣で市島先生に言われて…
「…すみません……最近…テレビ見る余裕なくて…」
素直に詫びたら、市島先生は…
「あははははは!!…まだまだだなぁ……赤松♪」
といいながら爆笑していた。