【短編】ヘタレ君のわがままなカノジョ。
遠慮なく、そのパンをかじります。
もぐもぐと咀嚼し、味を堪能します。
うん、美味しい。
君が食べさせてくれたから、美味しさも百倍です。
「…美味しい?」
「うん、美味しいね。」
俺は、唇についたクリームをペロリと舐めながら答えました。
おっと、クリームと言えば。
ポケットから取り出したティッシュで、すっかり忘れてた君の頬についたクリームを拭いました。
「ん!」
「動かないで。クリーム、付いてるよ。」
「〜っ!」
君は、顔をゆでダコみたいに真っ赤にして唇を噛みました。
「ん、いいよ。取れた」
「…ありがと。」
ポツリとお礼を言うと、今度は小さな口でパンをかじりました。
別に頬張ってもいいのに…。
俺も、お弁当を口に運びます。
「…ねぇ、ハル。いつも気になってたんだけど、そのお弁当って誰が作ってるの?」
「これ?俺だよ。」
「えっ、嘘!」
ヒカリちゃんは、大きくてパッチリした目を更に大きくして俺を見つめました。