変人執事とツンツンお嬢様
私もすぐ携帯を出し、赤外線で番号とアドレスを交換した。
「じゃ、後でメールするわね。」
「……は、はい。」
零慈くんに似たような笑顔を浮かべる彼女に、微かに頷き笑いかえす。
とても、温かい人だ。
「では参りましょう、弥呼さま。」
「ぁ、あぁ…」
参る と言っても隣の部屋だが。
彼に言われた通り、足を動かすと…
「弥呼ちゃんっ」
小さな声で呼びとめられた。
…?
振り返ると、真剣な顔をして一点に私を見つめていた。
「弥呼ちゃんが聞いてくれたこと…あの疑問は、自分で考えなきゃ意味ないわ。」
「…え?」
「とても難しいし、たくさん悩むかもしれないけど……すごく大切なことだから。
自分で気付いて、行動するしかないの。」
……自分で…気付く…
「時間がかかってもいいから、彼のこと…夜雅御のこと、もっと見てみて。
……自分自身のことも、ね?」
「……」
じゃぁ と手を振って、部屋に戻っていった佳織瑠さん。
彼女はさも当たり前と言うように笑っていたけど
私にはやはり難しい問題だった。
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