変人執事とツンツンお嬢様


「弥呼さまは、優しく真っ直ぐで…繊細で…本当はとても素直なお方です。

ただ、人を信じることができないだけで…本当は誰よりも、人の温かさを知っています。」




ゆっくりと紡がれる言葉は、あたしの心にストンと落ちて

なぜだか、涙が出そうになった。




「わたくしは、弥呼さまの味方です。あのお屋敷を出てからも…ずっと。
遠くから見守らさせていただきます。」


「波川さん…」


「ですから、弥呼さま」




波川さんは鏡越しに私を見つめ、こう言った。



「…頑張ってください。

何もお力にはなれませんが…わたくしは弥呼さまを信じておりますよ。」


「……っ」




優しく微笑む波川さんに、涙腺が緩む。


慌てて俯いた私に見て、波川さんはまた微笑んだ。




.
< 13 / 173 >

この作品をシェア

pagetop