変人執事とツンツンお嬢様
「弥呼さまは、優しく真っ直ぐで…繊細で…本当はとても素直なお方です。
ただ、人を信じることができないだけで…本当は誰よりも、人の温かさを知っています。」
ゆっくりと紡がれる言葉は、あたしの心にストンと落ちて
なぜだか、涙が出そうになった。
「わたくしは、弥呼さまの味方です。あのお屋敷を出てからも…ずっと。
遠くから見守らさせていただきます。」
「波川さん…」
「ですから、弥呼さま」
波川さんは鏡越しに私を見つめ、こう言った。
「…頑張ってください。
何もお力にはなれませんが…わたくしは弥呼さまを信じておりますよ。」
「……っ」
優しく微笑む波川さんに、涙腺が緩む。
慌てて俯いた私に見て、波川さんはまた微笑んだ。
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