変人執事とツンツンお嬢様


「挨拶回りをされる前から…これを、用意しておりました。」


「……え?」




ふと近くの紙袋から取り出されたのは



「……これ。」





挨拶回りのときに渡していた………お兄ちゃんから分けてもらったチョコレート。



とりあえず受け取るが、目をパチパチさせてしまう。




「…わたくしは、弥呼さまのことならなんでも分かりますよ。」


「……え?」


「本当の性格も、ご趣味も、今までのことも
…このチョコレートがお好きだということも、全て。お兄様よりも知っているはずです。」




背中まである長く黒い髪を撫で、ふんわりと微笑む夜雅御さん。




「……なんて、ただの執事の嫉妬ですがね。」


「………」




何を言っていいかわからず、つい黙ってしまう。


ただ、腕の中のチョコレートと同じかそれよりも甘く微笑む彼が

私を敬愛してくれているということは理解することができたのだった。








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