幸せの音が響く
―今日、学校来ない気か?まぁ、でも明日は出て来いよ―
10時過ぎに来た響からのメール着信音で目が覚めた。
実はまだ布団の中。
寝起きの頭で昨日の出来事を思い返してみた。
いきなり南の彼氏は俺だと名乗ってきた佐伯。
一瞬冗談かとも思ったが、真実らしい。
アイツのあの時の目は嘘をついてなかったし、何より南も肯定した。
保健医と言えど、学校の先生と生徒の関係。
なのにフェアじゃねぇとか何とか言いやがって・・・・せっかく落ち着かせた心が乱れだしたのが分かり、あの場から逃げるように帰ってきちまった。
自分のことだけで響のことを考えてなかったけど1人にしちまったんだよな。
ぜってー居心地悪かったよな。謝らねぇと。
でも何だって佐伯なんだよ。
何でそんな年上なんだよ。
先生と生徒だぞ?リスクが大きすぎるだろ。
いつどこで誰にバレるか分かんねぇのに、あんな所であっさりバラしやがって何考えてんだよ。
たまたま美化委員の奴らとは離れたとこにいたからいいものの・・・って何、昨日今日とアイツらの心配してんだよッ!!
俺にとっちゃバレた方が好都合じゃねぇかよ!!
学校にバレたら非難され、佐伯は別の学校に移動か最悪の場合、懲戒免職だ。
そうなったら南の前から佐伯は消え、南を手に入れることも可能・・・――
俺が学校に2人の関係をバラせば・・・――
・・・でも、でもそれで南が俺のモノになるのか?
そんなことをして喜ぶ奴がどこにいる?
佐伯も傷付き、南は俺を恨み涙するかもしれない。
そんな南を見て俺は心苦しくならないのか?
自分の私欲の為に好きな女を悲しませるのか?
好きな女の涙を見たいか?
俺はあいつと言い合って笑ってる時が楽しいんだ。
その時間が好きで、大口開けて笑う南が好きなんだ。
いくら南を自分の傍におけたって、心が傍になきゃ何の意味もない――