幸せの音が響く
『勇哉来ねぇのかな?』

「来にくい・・よね?」



昨日の一騒動で勇哉が学校をサボることは何となく分かる。

俺が勇哉でもサボってる。 

いつものように朝早い静かな教室に高村と2人。

まだ南も来ないうちに佐伯との事を聞きたい。


「あの・・ごめんね?ずっと黙ってて・・」


先に話題を持ち出したのは高村だった。


『や、別に高村が謝ることじゃねぇし。それにこの場合しょーがねぇって。
立場上、秘密にするしかねぇじゃん?』

「そうだけど、広瀬君どう思ったかな・・?」

『そりゃ複雑だろうけど、自分の気持ちには自分でケリつけるしかねぇしな。
でも、南と佐伯が付き合ってたってビックリなんだけど?後、高村とも昔からの知り合いってのも』

「だよね。でも2人が付き合いだしたのは涼子が中3の時だからまだ年の離れた恋人ってだけだったんだけどね。ちょうど10歳差。
もともと宇弥さんは涼子のお兄さんと友達で。
私もちょくちょく涼子の家に遊びに行ってて、そこで宇弥さんと知り合いに・・。お兄さんにもよくしてもらって」

『あーそれで・・』


昨日佐伯が“幸ちゃん”って言ってた理由が分かったぜ。
俺でさえまだ呼んだことのない下の名前を何で佐伯が呼んでんだ!!ってムカついたけど。


あれ?てかアイツ!!

俺が彼氏の事を聞きに行った時、色々喋ってたけど・・・全部自分の事じゃねぇか!!


身長は同じぐらいって、おめぇだよ!!
じゃ、煙草は吸わねぇし、酒も御無沙汰で・・・あの時言った事は全部自分の気持ちだったってワケか!?

なんなんだよ〜ぉ!?

あッ!!


『そういや俺、前に佐伯から彼女の話を聞いたことある!!』

「涼子の?どんな?」

『その時は彼女が南だなんてこれっぽっちも思ってなかったから、ただ漠然と聞いてただけだったんだけど。
でも、言われりゃ納得する部分が・・・』


そう。前と言うのは南に放課後保健室に呼び出され、色々尋問され説教された時。

あの後、交換条件で出された仕事も話も終わり、南が先に帰ったが俺はしばらく先生と話し込んでいた。


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