幸せの音が響く
以前先生と話した内容を大まかに説明した。

勿論、最後のセリフは控えて。


「へぇ、宇弥さんがそんな事を。きっと涼子が聞いたら恥ずかしがるだろうな。意外と照れ屋さんだから」 

『南って照れ屋さんなの!?』

「見た目から想像つかないかもしれないけど宇弥さんの前では可愛いんだよ。
向こうは大人だからよく涼子の事をからかったりするんだけど、その時の反応が宇弥さんにとって可愛く思う瞬間なんじゃないかな?前にそんなような事を言ってたから」

『でも、じゃじゃ馬って、その時は何とも思わなかったけど南だって分かった途端ウケるぜ!!』

「あはは。涼子も自分でじゃじゃ馬だって言ってるし、宇弥さんも“あんなじゃじゃ馬を扱いこなせるのは俺しかいない”とか言ってるからね。
だから、2人にはずっと続いてほしいなって思うんだけど・・―」


最後の所で高村が言葉を詰まらせた。

多分、勇哉の事だろう。
佐伯と南が続くということは、勇哉の恋が実らないことを意味するからだ。

高村は周りの人全てに幸せが訪れるといいと思っている。

キレイな心の持ち主だ。

だけど――


「分かってるんだけどね。   誰かの恋が実るとき、陰では誰かの恋が散るってことは・・。」


そうなんだよ。
なんだ、そこに気付いてたんだ。
そうだよな、高村は深いところまで物事を見るから気付かないはずないよな。


「だからせめて、また新しい恋をした時は実ってほしいな・・」


優しい。
と言うより情が深い。

本当にキレイだ。



『勇哉なら大丈夫だよ。
ただ、先生と生徒の関係って現実を受け入れられないだけだよ。
実際俺もそうだから』

「いきなり受け入れろって言われても難しいよね。
あ、でも・・このコトは内緒に・・・」

『大丈夫。言わないよ。
愛する2人を引き裂くことはしねぇって』


するわけねぇよ。
てか、そんなコトしてみろ。
南の恨み買って俺の恋までオジャンになっちまう。

そんな不幸な結果で終わりたくないッ!!


それに、きっと勇哉も言わない。

そんな汚い事をする奴じゃない。


それを分かってて佐伯も勇哉に言ったんだと思う。



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