幸せの音が響く
「そっ・・そんな人いないよ。私より鷹野君は?」

『お、俺!?』


聞き返されるとは思わなかった。

え!?これは――どうすれば?



2人で返却された本を棚に戻している途中、俺は手を止め横にいる高村を見つめた―





『・・・俺が好きなのは、高村だよ』





飾り立てた言葉でも、用意していた言葉でも何でもなく、俺の口から発せられた言葉はただ純粋に――

そのままの気持ちだ。




「えッ・・・?」




振り返り、高村は俺を見た。

まるで、何を言ってるの?どういうこと?という表情で。


高村の困惑した顔を見て―――





『ごめん、ウソ。今の冗談。忘れて』






断られたらどうしよう。



この一つの不安が俺の心を壊そうとするから――


俺は、自分を守るために言ってしまった。
















“冗談”



だと。




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