幸せの音が響く
「うっ・・・うっ・・」



高村を抱きしめている最中に聞こえた涙声。


えっ!?


ビックリして体を高村から放し、顔を覗きこんだ。



『高村!?えっなに!?どした!?』

「ごっ、ごめん!!何でもないの!!何でも・・っ」

『うそ。何でもないのに涙流さないでしょ。何か理由があるから・・』

「ううんッ」


言いながら首を横に振った。


「何でもないの・・ただ、嬉しくて・・」

『嬉しい?』

「鷹野君に、好きな人にこんなにも想われて、こうやって抱きしめられるなんて本当思ってなかったから・・だから、嬉しくて・・涙が止まらなくて・・・ごめんなさ―」


涙を流し、嬉しいと言った高村をもう一度力強く抱きしめた。



俺まで泣きそうになる。

高村が嬉しいと言うように、俺だって嬉しいんだ。

好きな人が、俺に想われていることが嬉しいと言う。 
その言葉が嬉しいんだ。



俺が高村を想えば想うほど嬉し涙を流すと言うのなら、俺はいくらでも愛を注ぐ。

俺が高村を抱きしめれば抱きしめるほど嬉し涙を流すと言うのなら、俺はいくらでも抱きしめる。


俺が何かをする――

それで高村が嬉しくなったり幸せを感じるなら、何だってやる。



他の誰でもない。

高村だけのために。









高村の嬉し涙は俺が守る。 


けど、違う理由で高村が涙を流すなら・・・―



俺は黙っていない。












悲しい涙なんか流させない。


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