幸せの音が響く
「どうしよう。目赤いよね?」

『保健室行こっか。もう先生来てるだろうし。
何か冷やすもん貰いに行こうぜ。赤みが引くか分かんねぇけどひんやりして気持ちいいし』

「うん」




ガラ――


『先生おはよー』

「おお、朝早いな。どうした?」

『ちょっと目冷やしたいんだけど何かない?』

「目?」


先生は私を見て言った。


「鷹野が泣かしたのか?」 

「や、違います!!これは鷹野君のせいじゃ―」

『ん〜まぁ、半分俺のせい?』

「色男は女を泣かせるのも上手いんだな。はいどうぞ」

「有難うございます。わ、気持ちいい」

『予鈴鳴るまでここにいよっか』

「ちょっと職員室に行ってくるけどすぐ戻ってくるから。あ、鷹野はおいで。荷物を運んでほしいんだ」

『え〜』

「つべこべ言わない」


そう言って2人は出て行き、保健室には私だけになった。

でも却ってちょうどいい。 



鷹野君ビックリしたよね?あんな、いきなり泣いて。

最悪。



でも、もっと最悪なのは嘘をついたこと。

泣いた時、理由を聞かれたけど、あの時言ったことは本当の理由じゃない。



あの涙は不安から流れ出たもの。

鷹野君に抱きしめられ嬉しくて流れ出た涙じゃない。

ただ、そう言わないと鷹野君が心配すると思ったから。


でも、嬉しいのは本当。


純粋に鷹野君の言葉と気持ちだけを信じたら嬉しいの一言しかない。





だけど、まだ実感無くて不安で―
だから水澤さん達が言った言葉が私の不安と疑問を膨らませる・・・。








鷹野君は何で私と付き合ってるの?

何で私なの?


本当は遊びなの?

水澤さんが言った事は本当なの?







私は、鷹野君に何を聞けばいいんだろう?

私は、鷹野君の何を信じればいいんだろう?





こんなコト頭で考えてたって答えなんか出るはずないのに。

分かってるのに。






片想いの時はこんなコト考えなくてよかったのに。


ううん、片想いの時はこんな不安を知らない――



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