幸せの音が響く
意外だった。
鷹野がそんな経験してたなんて。

形は違うけど気持ちを弄ばれたんなら、幸の言った言葉が心に響くはずだ。

そして、幸の気持ちも痛いほど分かるはず。


「でも・・幸と同じで異性を信じられないっていうなら、例えば幸があんたを好きって言ったとして、あんたはその思いを信じれるの?」

『高村の思いは信じれるよ』

「何で言い切れんの?」

『高村がそんな奴じゃないって南が1番よく分かってんだろ。
そりゃ最初は俺だって、あの話を聞いた時は女が本当にそんなふうに思うのかよ?って疑ったりもしたけど・・でも、直感で高村は違う。こいつは信じれるって思ったんだ。
何故かは分からねぇが、心がそう判断した』

「ふぅん」

『それからかな、高村を目で追うようになったのは。今まで同じクラスにいながら話すことも無く過ごしてきたのに。
でも、その時はまだ高村に恋してるなんて気付いてなくて。

ある日、昼休み教室で友達と紙飛行機飛ばして遊んでたら勢い余って窓から外に飛び出したんだ。
俺だけ窓から乗り出し紙飛行機がどこまで行くのか見てたら、見事に向かいの校舎に行き着いてさ。
凄ぇって思った瞬間、俺の視界に高村が入ったんだ。紙飛行機が降り着いた場所が図書室で・・。
ほら、図書室の窓側って机が並んでんじゃん?
そこにたまたま高村がいて、窓から入ってきた紙飛行機が高村の前に着陸したんだよ。
自分の前に降りてきた紙飛行機を手に取り、高村は微笑んだんだ。
その微笑んだ顔が一瞬にして俺の心を惹きつけた。
優しく、柔らかい表情で・・。
しばらく見惚れた。

あんなにも柔らかい顔で笑う女がいるんだって初めて知った。
その微笑んだ顔が今でも目に焼き付いてる』

「じゃぁ、いつ恋だって気付いたの?」

『それから数日後だよ。
友達同士で好きな女とかそういう話になってさ。
“好きな女”って聞いた瞬間、俺の頭ん中に高村が浮かんで、それで気付いたんだ。

俺は高村が好きなんだ―って』

「へぇ。そんな事が・・」 





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