光の魔法を君に
___コンコンッ
「王、そろそろ公務にお戻りを。」
海が扉を開け、恭しく礼をする。
そんな海をみて、タメ息をつきながら応える。
「わかったよ。」
夢羽の柔らかな髪から手を離し、部屋を出る。
長い廊下を歩きながら海に話しかける。
「海、人がいないところでは普通に喋ってくれよ。」
「それは、できません。」
キッパリと断る海は頑固だ。一度決めたことは曲げない。
そんなとこが夢羽に似ているんだけど。
「・・・まぁ、夢羽が起きて真面目にしてくれたら直すよ。」
クスリ、と意地悪な笑みを浮かべて俺をちら見する。
あぁ、もうわかってるんだよ。
その、お前のSなところも。
「・・・そうして。」
はぁ、と短いため息をついて公室に入る。
「では、後ほど来ますので。」
海は軽く礼をして出ていった。
積み上げられた資料に目を通す。
こんなとこで、子供のころに習った経済学が役に立つなんて思ってもなかったけど。
忙しい仕事、慣れてきた日常。
でも霞んで見えるのは、
夢羽、君がいないからだね。