光の魔法を君に
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真夜中、星も光を和らげている時間帯。
眠れなくて廊下を歩いていたら窓際に柔らかな銀色が目に入った。
そして、名を呼ぶ。
「――夢羽、」
静かな廊下に響く俺の声。
彼女はゆっくりと振り返り笑った。
「空、」
どうしたの――、なんて聞く前に傍まで駆け寄って細い腕を引き寄せて。
「、夢羽」
抱き締める。
さっきはよく感じなかった夢羽の温かさ、夢羽の重み、とか。
あぁ、やっと。やって、戻ってきたんだ。
この腕に、彼女が―――。
「っく、苦しいよ空。」
モゾモゾと俺の腕の中で動く夢羽。抵抗っていうよりこそばされてる、と思ってしまうほど弱い抵抗。そんなんで、離れるわけないのに。
「空、なんで寝てないの……?」
「……あぁ、酒盛りしてたんだよ。」
まぁ、実際はみんな酔い潰れて三時間ほど前には死んだように寝てたけど。
「そっかー、蘭たち朝まで喋るための仮眠とってるから抜けてきた。」
なんで、寝ないの。なんて聞けない。それをみんなわかってるからこそ何も言わなかったんだ。
夢羽は、再び眠ってまた目覚めないんじゃないかと、怖がってる。
笑う、笑顔の下には紛れもなく恐怖があった。