怪奇愛好倶楽部。
「数年前、学校の前で事故があったの。
その日は雨で、スリップしたトラックが
校門前に突っ込んで来て、
運悪く丁度下校時刻で、数人の生徒が
事故に巻き込まれちゃったんだって。
怪我をした人は何人も居たけど、
死者は出なかった。
それが救いね。
それで、その時に大勢の傘が
ごちゃ混ぜになって、いくつかが
そのまま、今も貸し出されてるの。
君の持ってる傘もそうで、
今も持ち主が探してるから、
その傘を使うと血の雨が降るって噂」
「……死んだ人は居ないんじゃないの?」
傘を捜してるのなら、学校に来て、
もう持ち主に返っているんじゃないのかな
「人は、ね。
怪我人の中に、
手がもげてしまった人が居て、
その手は、見つからないままのそうよ。
だからその‘手’が傘を捜しているの。
これ、うちの学校の怖い話の1つよ!」
楽しげに、萩さんが言った。
こういう話が、いくつもあるんだろうか。
「肝試しに使ったりするんだけど、
傘、中々見つからないし、
あってもそんな風にはならないんだよ」
すごいねーと、少女は言った。
みんな怖がりもしない。
羨ましいと、素直に思った。
そして、どうやら誰にも、
手は見えていないようだ。