怪奇愛好倶楽部。

「亮太郎、ちゃんと居るー?」

ガラスのドア越しに透けて見えるが、
念のために声をかけて確かめる。

もしも、違う何かだったら嫌だし。

「居る居る。
 何かあったらちゃんと言えよ」

……絶対何かがある事を期待してやがる。

「あ、髪を洗い始める前にも言えよ?
 手伝われてたら、撮るから」

すりガラス越しにも、
彼がカメラを構えたのを確認できた。

酷い。


「僕の気持ちにもなってみろよ!」

「考えてみろ。
 お前、正体のわからない奴に
 髪を洗われてるんだろ?

 相手を知りたくないのか?
 わかってるほうが、安心じゃないか」

お前の事を考えて言ってるんだと、
彼はそう言うが、絶対嘘だ。


「……そもそも洗われたくないんだけど」


何も起こらないことを、祈りたい。

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